2009年10月29日

心は世界に旅をする CHAPTER 4


 前回は、KOKIAさんにアイルランドでの公演について語っていただきました。その次に彼女が訪れた国はポーランド。長時間、メンバーと車で移動し、ポーランドへ。初めて訪れる国で不安もあったそうですが予想を超える歓迎振りで、ブルーノートでの公演が行なわれたそうです。
移動は車で。
――ヨーロッパ・ツアーの3ヵ国目はポーランド。
 「アイルランドの後は、ベルリンに飛行機で行って、そこからはまさに今回のヨーロッパ・ツアーの醍醐味である“大きなバンに乗って、みんなで一緒に回る”っていうのが始まって。ドイツからポーランドまでの間にどこかの国を通過したんですけど……“ここが国境です”っていう案内もないし、入国のスタンプを押すわけでもないので、あまり実感がないままポーランドへ入りました(笑)」
――でも、何時間も車で移動するのは体力的にも大変ですよね?
 「私も行く前は“大変なんだろうな”って思ってたんですけど。実際はそうでもなくて、かなり楽しかったですよ。日本の高速道路と違って壁もないし、延々と続く地平線をぼんやり眺めたりもできるんですよ。土地によって風景や建物の様子も違うし、わりとのんびりしてましたね、移動中は。天候にも恵まれていたし、メロディや詞がフッと浮かんできて、それを書き留めたりもしてました。あと、帰国してからやることのリストを作ったり」
――確かに風景は綺麗ですよね。
 「そうですね。何て言うか、いろいろと興味深いことが多いんですよね。さっきまで英語が通じていたのに、ドイツに入ったとたん、ドイツ語以外はまったく通じなくなってしまったり。国によってお手洗いのシステムが違っていたりとか、いちいち“ふーん、おもしろいなあ”ということがあって、移動することに飽きなかったですね。ただ、ポーランドは滞在時間が短くて“ライヴをやって、寝るだけ”っという感じだったんで、正直言って、その土地のことはほとんど何も見れなかったんです。会場に直行して、ライヴが終わったら、そのままホテル。次の朝、出発するときに“あ、こんなところに泊まってたんだ”っていう位に残念なことに何も観る暇なく、次の国へ」
――なるほど。ポーランドでのライヴはどうだったんですか?
 「ライヴ会場に行く前は、ちょっと不安なところもあったんですよね。初めての国だし、ホントにお客さんが来てくれるのかなって。ポーランドに入ってからはずっと牧歌的な風景が続いていたから、会場を見たときは驚きました。“こんなところに、こんな素敵なライヴ・ハウスが!”って」
お城のような会場。
――ポーランドのブルーノート。綺麗な会場ですよね。
 「すごくお洒落なんですよ、もともと本物のお城だった場所を改装しているみたいなので。ただ、楽屋がめちゃくちゃ寒かったんです。風が入ってくる、とかではなくて、ひんやりと芯から冷えてくるような……。“ここ、ワインの貯蔵庫だったんじゃない? もしくは牢屋とか”って、みんなで話してました(笑)」
ファンの人と交流。
――でも、ライヴ自体はかなり盛り上がってましたよね。映像からも、お客さんの反応の強さが伝わってきました。
 「うん、今回のツアーのなかでもいちばん熱いライヴだったかもしれない。まず、みんなオープン・マインドだったんですよ。会場によって雰囲気は違ってて、なかには“ちょっと構えてるな”っていうところもあったんですけど。でもポーランドのお客さんは“わー! KOKIAだ! 待ってました!!”っていう感じが最初から伝わってきて。しっかり届いてるな、響いてるなっていう手ごたえがありました。それはホントに嬉しかったですし、こちらのテンションも上がりましたね。立ち見のお客さんもたくさん入ってくれていたし」
観客はスタンディング・オベーション!!
舞台袖にて。
――拍手や歓声も情熱的でした。オーディエンスとのコミュニケーションもしっかり取れてたんじゃないですか?
 「ステージと客席の距離がちょうど良かったんだと思います。親近感が沸く距離というか、私の動きや表情もきっとオーディエンスに見えていたと思うんです。とくに初めてステージをやる場所だから、“KOKIAってどんな人なんだろう?”って思ってるお客さんも多いじゃないですか。そういう場所では、顔の表情まで見えた方が人柄なんかも伝わりますからね。だからアットホームな会場で良かったと思っています。それから、もしかしたら、ポーランドの言葉が私にとってはぜんぜんわからないっていうのが逆に良かったのかもしれないですね。フランスやドイツは少し言葉がわかるから、“変なこと言っちゃいけない”って思うこともあって。下手に緊張しちゃうこともあるんですけど、でも、ポーランドの言葉はぜんぜん分からないので、“ここで私がやるのは、歌うことだけ”って開き直ったというか。ずっとご機嫌でした(笑)」
――DVDの中でも「KOKIAちゃん、ご機嫌です」って言ってましたよね(笑)。でも、初めて行った国であれだけ熱烈に歓迎されるのはやっぱり嬉しいですよね。KOKIAさんの音楽がしっかり浸透している雰囲気もあったし……。
 「やっぱりインターネットの力が大きいみたいですね、KOKIAを知るきっかけとしては。あとは友達からKOKIAのCDをプレゼントされたっていう人もいましたね。もうひとつ印象的だったのは、とにかく人が陽気だったこと。ライヴ会場の雰囲気にも国民性が出ると思うんだけど――それは私にとって、とても興味深いところでもあるんですよね――ポーランドはみんな楽しそうだった。サイン会で並んでるときも“あなたもKOKIA好きなんですしょ”みたいな感じで、すぐにファンの人同士が打ち溶け合ってて。あと、女性がすごく可愛かったことも印象に残ってますね」
取材・文/森 朋之(2009年10月)

【KOKIAの魅力に迫る3つの質問】
毎回、更新ごとに3つのQ&Aを紹介していきます。今回は……。
★好きなミュージシャンは?
A. 最近、あまり音楽を聴いていないので、よくわかりません。
★最近よく聴いている音楽は?
A. Jazzを家で流すことが多くなりました。最近の変化です。
★音楽以外の趣味は?
A. 映画鑑賞。お家の掃除や模様替え。ワン子たちのお世話。絵を描くことや考えごと……などなど。
KOKIAベスト・アルバムの第2弾
『Coquillage ~The Best CollectionII~』が12月2日にリリース決定!

 2006年以降の作品から選りすぐりの名曲をセレクト。初回限定盤には、代表曲「ありがとう…(the Coquillage edition)」と、昨年末NYでフリー配布されたCD『MUSIC GIFT』に収められていた「心のロウソク」(英語バージョン)の2曲が収録されたスペシャルCDも付きます!
配信シングル3部作〈Life Trilogy~いのちの3部作~〉第2章、配信決定!!
 大好評の配信限定シングル3部作・第2章「single mother/クリスマスの響き」が、11月18日に配信スタートします! お互いにかけがえのない存在である母と子の絆を、私小説のようなリアリティで描いた「single mother」、聖なる夜に、世界中の人々の心の安息を祈る「クリスマスの響き」、恒例の洋楽曲カヴァーは、喜劇王チャップリン自らが映画『モダンタイムス』の主題歌として作り、マイケル・ジャクソンが生前最も愛したといわれる「Smile」、そして、犬好きの人は必聴!? チャーミングな遊び心が楽しい「白い犬と踊る夜」と全4曲すべて新録。クリスマス・シーズンにぴったりの作品です。
【Winter Live Tour 2009「12月の贈り物」】
今年もクリスマスの近づいた12月にコンサートが決定。
オリジナル曲はもちろん、クリスマス・ナンバーや新曲も聴けてしまうかも!

12/11 (名古屋)名古屋市千種小劇場
開場18:00開演19:00 料金¥5000(全席指定)
一般プレイガイド発売 10/24
お問い合わせ サンデーフォーク 052-320-9100  

12/13 (福岡)博多Gate's7
開場17:00開演18:00 料金¥5000(全自由 1D別)
一般プレイガイド発売 10/24
お問い合わせ キョードー西日本 092-714-0159

12/14 (広島)クラブ クアトロ
開場18:00開演19:00 料金¥5000(全席指定 1D別)
一般プレイガイド発売 10/24
お問い合わせ ユニオン音楽事務所 082-247-6111 

12/15 (大阪)サンケイホール ブリーゼ
開場18:00開演19:00 料金¥6000(全席指定)
一般プレイガイド発売 10/24
お問い合わせ Songs 06-6353-6601  

12/21 (仙台)バックページ
開場18:00開演19:00 料金¥5000(全自由 1D別)
一般プレイガイド発売 10/31
お問い合わせ GIP 022-222-9999  

12/23.24 (横浜)横浜ランドマークホール
23 開場17:00開演18:00 料金¥6000(全席指定)
24 開場18:00開演19:00 料金¥6000(全席指定)
一般プレイガイド発売 10/24
問い合わせ KMミュージック 045-201-9999

■オフィシャル・サイト:http://www.kokia.com/
■ビクターエンタテイメント:http://www.jvcmusic.co.jp/-/Artist/A012051.html

2009年10月15日

心は世界に旅をする CHAPTER 3


前回は、KOKIAさんにフランスでの公演について語っていただきました。フランスの次に彼女たちが訪れた国はアイルランド。ダブリンに着いたらすぐにリハーサルという強行スケジュールをこなしつつ、この地での公演は、いつもより不安の多いものだったようです……。


会場前の大きなポスター。
――2つめの国はアイルランド。
「まず、移動がきつかった(笑)。朝早くフランスを出発して、ダブリンに着いたらそのままリハをやって、次の日は本番でしたから」
――体調的にもしんどいスケジュールですよね。リハーサルというのはアイルランドのバンド、パックフェアとの音合わせですよね?
「そうです。ホテルのバンケット・ルームで彼らとの初めてのリハーサルをやって――ライヴの前日に初めて会うバンドとリハをやること自体、日本ではありえないことですからね(笑)。そういう状況も込みで海外での経験を楽しむというか、すべてが挑戦だったんですよ、ヨーロッパでのツアーは。やるべきことをやっていくしかないですよね」
――リハーサルの手ごたえはどうだったんですか?
「それがじつは、かなり心配の残る状態で本番を迎えました。でも、あまりにも心配しすぎると、さらに悪い方向に転んじゃいますからね。“外国でライヴをやるっていうのは、こういうこともあるんだ”って思うしかなかったですよね」
――うーん、かなりタフな状況ですねえ。会場はライヴ・ハウスですか?
「そうです。テンプルバーっていう、ダブリンでも一番栄えている場所にあるライヴ・ハウス。わりと新しいところで、ホットなスポットだと思いますよ。ロック・バンドもよくライヴをやってるみたいだし」

アイルランドのバンド、バックフェアと。
――お客さんもすごく盛り上がってましたよね。
「うん、私も本番は楽しかったです。内容的にも、他の場所とは大分違ってたんですよね。KOKIAのワンマン・ライヴというよりも、“パックフェアがKOKIAをゲストに迎えた”っていう雰囲気で。彼らのお客さんも来ていたし、“初めまして、KOKIAです”っていう感じでした。トラディショナルやパックフェアの曲も演奏したライヴでしたし」
――アイリッシュ・トラッドを現地で演奏するというのは、どういう感じなんですか?
「楽しいですよ、すごく。アプローチがぜんぜん違うんですよね。和音にしても旋律にしても、“え、そっちに行くんだ?”っていう驚きがたくさんある。ステージの上で意外な方向に変化していく音楽っていうのかな、それがすごく面白いんですよね」
――日本では味わえない経験かもしれないですね。
「日本の場合、だいたい予想がつくんですよ。“え、そっち?!”みたいなことは少なくて、“やっぱりそう来るよね”っていう感じが多いんですよね。それは上手いとか下手っていうことではなくて、想定範囲内のことが多いって感じです」
――でも、アイリッシュ・バンドとセッションして、すぐに馴染める人っていうのも少ないと思いますよ。
「私はどこに行っても大丈夫です(笑)。多分。でも、それが出来なかったらミュージシャンとして辛いですよね」

アイルランドの観客を魅了。
――KOKIAさんって、もともとアイルランドは好きですよね。以前、“いきなり思い立って、アイルランドに行ってきました”って言ってましたし。
「それ、すっごい昔の話ですね(笑)。いろいろなインタビューで“KOKIAさんはアイルランドの音楽が好きなんですか?”って聞かれることがすごく多かったんです。それで、ひとり旅をしてみたいと思ったときに“インドとアイルランド、どっちに行こうかな”って迷って、“みんなによくアイルランドのことを聞かれるから、行ってみよう”って行ったこともありましたね」
――アイリッシュ・トラッドに似た手触りの楽曲がありますからね、KOKIAさんの作品には。
「よくそんな風に言われるんですけど、じつは自分では今でもよくわかっていないんですよ。“アイリッシュのメロディって何?”っていう。感じです。実際にアイルランドに行くようになってわかったんですけど、すごく難しいんですよ。彼らの血に記憶されているものですからね、あのリズムとメロディは。しかも、実際はすごく激しい音楽だし。簡単に真似できるようなものではないですね」

感動の一瞬!
――なるほど。コンサート以外で印象に残っていることはありますか?
「アイルランドはホテルのロケーションが素晴らしかった! 最高のビーチが目の前にあって、あれは束の間のご褒美だったなあ。あと、お風呂にもちゃんと浸かれたし(笑)」
――パリでは風呂に浸かれなかったんですか?
「そうなんですよ。体調管理のことを考えたとき、私にとってかなり大事なのはお風呂なんですよ。これは準備の段階から何度もお願いしたんですけど、ホテルの部屋にバスタブだけは付けてほしいって。ベストなステージにするための外せない条件だったんですけど、実際に行ってみると確かにバスタブはあるけど、“お湯は出ない”“栓がない”っていうことが続いて(笑)海外ではよくあることですけど、かなりへこみました」
――すごいなあ。“バスタブそのものはあるよ“っていうことですね。
「そうかもしれない。結局、パリの3日間はバスタブに浸かれなかったんですよ。ゆっくりお風呂に入ったのは、アイルランドが初めて。まあ、そのあとはまたかなり厳しい旅が続くんですけど……。女性だし、小綺麗にしておくのも仕事のうちじゃないですか? 集合時間にはちゃんと“KOKIA”になって登場するっていうのも、私のなかでは心がけていることなので」
――ステージの上だけじゃなくて?
「そう。たとえば朝7時に集合だったら、5時くらいからKOKIAになる準備をするんです。それは単に“人前ではお化粧をする”っていうことではなくて、お風呂に入って、身なりを綺麗にして、アイロンのかかった服に袖を通し、気持ちの良い状態で集合場所に現れる。そういうことは1日の始まりなわけですから、素敵なステージにするために必ず必要なことだと思うんです。ただ、ヨーロッパのツアーではKOKIAでいなくちゃいけない時間がいつもよりも長くて、そうしたことも今回のツアーがかなり大変だったところの1つですね」

アイルランドの海でたたずむKOKIAさん。
取材・文/森 朋之(2009年9月)

【KOKIAの魅力に迫る3つの質問】
毎回、更新ごとに3つのQ&Aを紹介していきます。今回は……。
★ご自身で分析する長所は?
A. 意外と真面目な部分かしら? 責任感が強いというか、仕事に対してかなりの前向きな向き合い方がいいなと思います。
★ご自身で分析する短所は?
A. 興味のないものに全く興味がわかないこと。例えば、数字。^^; 計算は大の苦手です。
★尊敬している人物は?
A. マザーテレサ。信念をもって何かをやり遂げる、貫き通している人に惹かれます。
【KOKIA LIVE DVD】
『WHEREVER I AM ?WORLD TOUR 2009 IN EUROPE?』
(VIBL-481/3 税込8,400円)
[収録内容]
【Disc.1】 START from Paris
【Disc.2】 GO around the countries
【Disc.3】 RETURN to my heart

【Winter Live Tour 2009「12月の贈り物」】
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12/11 (名古屋)名古屋市千種小劇場
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2009年10月1日

心は世界に旅をする CHAPTER 2


前回は、ライヴ&ドキュメンタリーDVD『Wherever I am ~ world tour 2009 in Europe ~』の全体像について、KOKIAさんにインタビューをしました。ここからは、フランス、アイルランド、ポーランド、ベルギー、ドイツとツアーで回った国々での思い出を振り返ってもらいます。今回は、フランス編をお送りします。
――フランスでのライヴは今回が4回目ですよね。KOKIAさんにとってはホームグラウンドみたいな感覚ですか?
 「ヨーロッパの中では完全にそうですね。DVDのなかで話してたかどうか忘れちゃったんですけど、これから自分のツアーがどんなふうに広がっていったとしても“パリから始まった”っていうのは忘れられないです」
――ヨーロッパでの活動をパリから始めたのは、何が理由だったんですか?
 「いや、特に理由はないんですよ(笑)。フランスの方から“コンサートをしませんか?”って言ってもらったのがきっかけだったので。ただ、パリ以外でもそうですけど、日本だったり日本の文化に興味を持っている人は非常に多いと感じています」
――今回のパリでのライヴは合計3回。
 「そうですね。コンサート・ホール、船上ライヴ、ライヴ・ハウスという3つの場所でやらせてもらったんですけど、3つの異なったシチュエーションに合わせて、ステージの雰囲気もセット・リストも洋服も、MCのテンションも毎回少しずつ変えるように心がけたので、そういう意味では、同じフランス内でのライヴでも、いろんなKOKIAを楽しんでもらえるんじゃないかなって思います。お客さんも楽しかったと思うけど――たぶん、3日間全部来てくださった人もいると思うので――やってる側もすごく楽しかったです」

フランス公演、最初の会場“LA CIGALE”。
開場前に並ぶファンの人たち。
――なるほど。まずは“LA CIGALE”というホールですが、ここは本当にキレイなところですね。
 「キレイですよねー。何て言うか、すごく歴史を感じられる場所なんですよね。以前からフランスの人たちに“LA CIGALEは伝統のあるホールだから、あそこでコンサートがやれるのはすごいことなんだよ”っていうことを聞いていて。今回ようやく実現したから、すごく楽しみだったんですよね」

お客さん、総立ち!
――しかも、今回のツアーのなかでは唯一のフル・バンドによるライヴですからね。
 「これまでの4年間の(ヨーロッパ・ツアーでの)歴史を振り返ってみても、4人のメンバーを携えてのライヴは今回は初めてでした。日本でやっているステージに近いものを見せることができたのは、とてもいいことだと思いますね。私のライヴを観たことがあるお客さんに対しても“今までとは違うでしょう”というものを提示できたんじゃないかなって。ただ、私のなかではどのライヴも同じなんですけどね。ギター1本のライヴでも弾き語りでも、歌うときの気持ちはまったく変わらないというか、バンドの編成が変わっても、歌の力は常に同じなんです」
――でも、ツアーの初日っていう緊張感はあったんじゃないですか?
 「緊張が完全になくなることは、たぶんないと思うんです。ただ、“これはステージ前のいい塩梅”って思えるくらいにはなりたいなって。緊張が変なふうに転ばないように、自分の気持ちをコントロールするというか、今回は上手くいったんじゃないかな」

公演終了後、バンド・メンバーと記念撮影。
――2日目の船上ライヴもかなりスペシャルな企画ですよね。
 「そうですよね。しかもセーヌ川ですから、私もかなりテンションが上がってました。だって、普通のホールとかで綺麗な風景を映そうと思ったら、ものすごく大変じゃないですか。でも船の上でライヴをやってると、どんどん風景が変わっていくんですよ! エッフェル塔も見えたし、ホントにばっちりのロケーションでした。“船の上でライヴをしてみませんか?”っていう、フランスの方からのご提案なんですけどね」

2ヵ所目の公演は、船上!
――DVDを観ていても、観光客気分で楽しめました(笑)。
 「ロマンティックですよね。気付いたかもしれないけど、後ろの方に座ってるカップルのお客さんが……」
――キスしてましたね。
 「そう! フランスに限らず、どこの国でもラブリーな雰囲気で聴いてくれてるお客さんがいて。あれはステージから見てても、すごく微笑ましいんですよ。“幸せそうだな”って。もともとKOKIAのライヴって、カップル率が高いんですけどね」
――KOKIAさんもバカンス気分になれました?
 「いや、ぜんぜんでした。とにかく体調管理のことで頭がいっぱいで、最後まで無事に終えることだけを考えてたので。かなりピリピリしてたんですよ、じつは」
――そんなふうには見えなかったですけどね。じゃあ、観光っぽいことも……。
 「まったくない(笑)。撮影のためにホテルの前に出たり、ちょっと海岸に行ったくらいかな。他のみんなは世界遺産を見に行ったりもしてたけど、私はそういうスペシャルは何も見てないです」
――楽しみは食事くらい?
 「といっても、ステージが終わるまでは、ほぼ何も食べないんですけどね。あっちはライヴが始まるのが遅いので、毎日ライヴが終わるまで、めちゃくちゃお腹が空いてました(笑)。そのぶん、夜は人の2倍くらい食べてましたけど……。何ていうか、毎日のように試合をしているスポーツ選手みたいな感じですよね。コンサート以外のことは何も考えず、とにかく規則正しく過ごすっていう」

絶好のシチュエーションで歌を届けるKOKIAさん。
――ストイックな生活だったと。3日目のライヴ・ハウスはどうだったんですか?
 「じつはあまり調子が良くなかったんです。DVDの映像にも咳をしているところが度々映ってるんですけど、どうやらアレルギーが出てしまったみたいで。楽屋にいると苦しくなるみたいだったから、1部と2部の間は楽屋に戻らず、客席で演奏を聴いてました」
――でも、ライヴ自体はいい雰囲気だったのでは?
 「そうですね、ライヴはパリの3日間のなかでも一番よかったかもしれない。たぶん、“明日からは別の国に行く”っていう区切りの日だったことも関係してるんじゃないかな。'パリのみんな、ありがとう。明日からもがんばるよー!'みたいな(笑)」
取材・文/森 朋之(2009年9月)

【KOKIAの魅力に迫る3つの質問】
毎回、更新ごとに3つのQ&Aを紹介していきます。今回は……。
★歌手になりたいと思った動機は?
A. 実はそんなにないんです。気がつけば歌手になっていました。なんか自然に流れついたという感じです。
★歌うことについての信念は?
A. 心をこめること。そして歌う人であることに自信と誇りをもつこと。
★好きな言葉は?
A. おいしい~。きもちい~。きれい! すごい! そしてありがとう。かな^^
【KOKIA LIVE DVD】
『WHEREVER I AM ~ WORLD TOUR 2009 IN EUROPE ~』
(VIBL-481/3 税込8,400円)
[収録内容]
【Disc.1】 START from Paris 
【Disc.2】 GO around the countries
【Disc.3】 RETURN to my heart 

【Winter Live Tour 2009「12月の贈り物」】
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12/11 (名古屋)名古屋市千種小劇場
開場18:00開演19:00 料金¥5000(全席指定)
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12/23.24 (横浜)横浜ランドマークホール
23 開場17:00開演18:00 料金¥6000(全席指定)
24 開場18:00開演19:00 料金¥6000(全席指定)
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■オフィシャル・サイト:http://www.kokia.com/
■ビクターエンタテイメント:http://www.jvcmusic.co.jp/-/Artist/A012051.html